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AI提供者のための法律論(Q&A)

目次

用語の定義

「AI提供者」「AI開発者」「AI利用者」という用語は、総務省・経済産業省が発表している「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」において、次のように定義されています。
本サイトも、この定義に倣っています。
なお、AI提供者がAI開発者やAI利用者を兼ねる場合もあります。

・AI提供者(AI Provider)
AIシステムをアプリケーション、製品、既存のシステム、ビジネスプロセス等に組み込んだサービスとしてAI利用者(AI Business User)、場合によっては業務外利用者に提供する事業者
AIシステム検証、AIシステムの他システムとの連携の実装、AIシステム・サービスの提供、正常稼働のためのAIシステムにおけるAI利用者(AI Business User)側の運用サポート又はAIサービスの運用自体を担う。
AIサービスの提供に伴い、様々なステークホルダーとのコミュニケーションが求められることもある。

・AI開発者(AI Developer)
AIシステムを開発する事業者(AIを研究開発する事業者を含む)
AIモデル・アルゴリズムの開発、データ収集(購入を含む)、前処理、AIモデル学習及び検証を通してAIモデル、AIモデルのシステム基盤、入出力機能等を含むAIシステムを構築する役割を担う。
また、AIモデル・システムの開発及び実運用後も、特定領域におけるドメイン知識の拡充や環境の変化への対応、さらに人間の意図や価値観に沿った行動を実現するための調整(アライメント)を目的とした事後学習(Post Training)を通じて、AIモデルの性能を維持・改善することも役割として担う。

・AI利用者(AI Business User)
事業活動において、AIシステム又はAIサービスを利用する事業者
AI提供者が意図している適正な利用を行い、環境変化等の情報をAI提供者と共有し正常稼働を継続すること又は必要に応じて提供されたAIシステムを運用する役割を担う。
また、AIの活用において業務外利用者に何らかの影響が考えられる場合は、当該者に対するAIによる意図しない不利益の回避、AIによる便益最大化の実現に努める役割を担う。

Q1. 当社は、他社が開発したAIシステムを組み込んだサービスを提供する事業者(AI提供者)です。AI開発者やAI利用者のための法律論は無関係と考えてよいですか。

A. 無関係と考えることはできません。
自社がAI開発者・AI提供者・AI利用者のどれに当たるかではなく、自社がAIに関してどのような行為をするか(開発、提供、利用のどの行為をするか)で判断してください。
例えば、AI提供者が自社のデータを利用して追加学習をすれば、AIを開発していることになり、AI開発者のための法律論が適用されます。AI提供者が自ら情報をAIシステムに入力してAI生成物を生成すれば、AIを利用していることになり、AI利用者のための法律論が適用されます。

Q2. AI提供者が検討すべき法律論には、どのようなものがありますか。

A. AI提供者は、主に、次のような法律論を検討すべきです。
・法令に違反しないこと
他者の知的財産権その他の権利を侵害しないこと
個人情報、プライバシー、営業秘密等を適切に取り扱うこと
業規制(弁護士法、薬機法等)に違反しないこと
・自社の権利・知的財産を守ること
・契約を適切に処理すること
ライセンスを適切に処理すること
取引先との契約を適切に処理すること
利用規約を適切に処理すること
・「AI事業者ガイドライン」(総務省・経済産業省)を尊重すること

Q3. 著作権侵害は、どのような要件を満たす場合に成立しますか。

A. 著作権侵害は、次の3つの要件を満たす場合に成立します。
①類似性
既存の著作物と同一性・類似性を有することをいいます。
②依拠性
既存の著作物に依拠していることをいいます。
③権利制限規定非該当
権利制限規定(著作権法30条の4等)に該当しないことをいいます。

Q4. 当社(AI提供者)は、他社が開発したAIシステムをサービスに組み込むに当たり、既存の著作物を無断で収集・加工・入力して、AIシステムの追加学習をしたいのですが、これは著作権侵害になりますか。

A. 原則として、著作権侵害になりません。
著作権法30条の4は、著作物は、「情報解析」の用に供する場合は、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる(著作権侵害にはならない)と定めています。
AI学習は、この「情報解析」に当たります。
ただし、①当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させる目的がある(併存する)場合、②当該著作物の著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、著作権侵害になる可能性があります。
上記①の例として、AI提供者が、意図的に、既存の著作物の創作的表現の全部又は一部を出力させることを目的として、追加学習をする場合があります。
上記②の例として、大量の情報を容易に情報解析(AI学習)に活用できる形で整理したデータベースの著作物(情報解析用データベース著作物)が販売されている場合に、当該データベースを情報解析(AI学習)目的で利用する場合があります。

Q5. AI学習のために既存の著作物を無断で利用する行為については、AI開発者が行う大規模なAI学習よりも、AI提供者が行う小規模なAI学習の方が、著作権侵害になる可能性が高いと聞きましたが、本当ですか。

A. 本当です。
AI学習(情報解析)のために既存の著作物を無断で利用する行為は、原則として、著作権侵害になりませんが、例外として、当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させる目的(表現享受目的)がある(併存する)場合は、著作権侵害になる可能性があります(著作権法30条の4)。
AI開発者が大量のデータを利用して行う大規模なAI学習では、通常、表現享受目的はありません。
他方、AI提供者が少量のデータを利用して行う小規模なAI学習では、意図的に、既存の著作物の創作的表現の全部又は一部を出力させる目的で学習を行う場合があり、このような場合には、表現享受目的が認められる可能性が高いといえます。

Q6. ウェブ上のイラスト(著作物)に「AI学習禁止」と表示されています。当社(AI提供者)が、無断で、当該イラストをAI学習(追加学習)のために利用した場合、著作権侵害になりますか。

A. 原則として、著作権侵害になりません。
ただし、契約違反になる可能性はあります。
(著作権侵害と契約違反は別問題です)

著作権者がAI学習禁止という意思表示をしていても、AI学習(情報解析)のために既存の著作物を無断で利用する行為は、原則として、著作権侵害になりません(著作権法30条の4)。
ただし、著作権者との間で「当該イラストをAI学習に利用しない」という契約が成立している場合は、当該契約違反になる可能性があります(このような契約の有効性については見解が分かれています)。
当該イラストの利用規約等に同意ボタンが付されていて、同意ボタンをクリックして当該イラストを利用した場合等には、契約が成立していると認められる可能性があります(ケースバイケースです)。

Q7. 当社(AI提供者)が、ウェブ上のコンテンツを収集してAIの学習(追加学習)に利用したところ、コンテンツの一部に海賊版が含まれていました。著作権侵害になりますか。

A. 原則として、著作権侵害になりません。
ただし、海賊版を収集することが、海賊版による著作権侵害を助長(幇助)することがないように、注意する必要があります。

コンテンツが海賊版であっても、AI学習(情報解析)のためにコンテンツを利用する行為は、原則として、著作権侵害になりません(著作権法30条の4)。
なお、外国の法律には、海賊版をAI学習のために利用する行為は著作権侵害になると定めるものがありますが、日本の著作権法には、そのような定めはありません。

Q8. 当社(AI提供者)は、顧客から、「特定の作家の作品とそっくりなAI生成物を生成できるシステムを作ってほしい」と依頼されました。受けてよいですか。

A. 著作権者の許諾がない場合は、受けるべきではありません。
AI学習(情報解析)のために既存の著作物を無断で利用する行為は、原則として、著作権侵害になりませんが、例外として、当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させる目的(表現享受目的)がある(併存する)場合は、著作権侵害になる可能性があります(著作権法30条の4)。
AI提供者が、意図的に、特定の作家の作品とそっくりなAI生成物を生成する目的(既存の著作物の創作的表現の全部又は一部を出力させる目的)でAI学習を行う場合は、表現享受目的が認められる可能性が高いといえます。

Q9. 当社(AI提供者)が提供する生成AIサービスの利用者(AI利用者)が、既存の著作物に類似するAI生成物を生成・利用するという著作権侵害行為をしました。当社は、当該著作権侵害について、責任を負いますか。

A. 原則として、責任を負いません。
ただし、①AI提供者が、生成AIサービスを提供するに当たり、当該生成AIが既存の著作物の類似物を生成する蓋然性の高さを認識しているにもかかわらず、当該類似物の生成を抑止する措置を講じていない場合、②AI提供者が、既存の著作物の類似物を高頻度で生成するような学習(追加学習)を行った場合等には、AI提供者が責任を負う可能性があります。

また、①AI利用者が著作権侵害を生じさせる蓋然性が高いと客観的に認められ、②この蓋然性をAI提供者において予見でき、③侵害結果回避のための措置を講ずることが可能であったにもかかわらず、④適切な措置を講じていない場合等には、AI提供者は、AI利用者の著作権侵害行為を幇助した者として、共同不法行為責任を負う可能性があります。

Q10. 当社(AI提供者)は、特定の作家の作風・画風を模倣したAI生成物を生成する目的で、当該作家の著作物を無断で利用して、AI学習(追加学習)をしたいのですが、これは著作権侵害になりますか。

A. 原則として、著作権侵害になりませんが、著作権侵害になるかどうかの判断は非常に難しい(ケースバイケースである)ため、慎重に判断すべきです。
AI学習(情報解析)のために既存の著作物を無断で利用する行為は、原則として、著作権侵害になりませんが、例外として、当該著作物に「表現」された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させる目的(表現享受目的)がある(併存する)場合は、著作権侵害になる可能性があります(著作権法30条の4)。
そもそも、著作権法が保護しているのは「表現」であり、「アイデア」は保護していません。
作風・画風は「表現」ではなく、「アイデア」に当たるため、特定の作家の作風・画風(「アイデア」)を模倣したAI生成物を生成する目的は、表現享受目的には当たりません。
とはいえ、実際には、模倣した作風・画風が「アイデア」なのか「表現」なのかの区別は非常に難しい(ケースバイケースである)ため、作風・画風の模倣だから著作権侵害にはならないと安易に考えるのは危険です。

Q11. 大量の情報を容易に情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物(情報解析用データベース著作物)が販売されている場合に、当社(AI提供者)が、当該データベースを購入せずに、無断でAI学習のために利用することは、著作権侵害になりますか。

A. 著作権侵害になる可能性があります。
AI学習(情報解析)のために既存の著作物を無断で利用する行為は、原則として、著作権侵害になりませんが、例外として、「当該著作物の著作権者の利益を不当に害する」こととなる場合は、著作権侵害になる可能性があります(著作権法30条の4)。
情報解析用データベース著作物が販売されている場合に、当該データベースを無断でAI学習のために利用することは、「当該著作物の著作権者の利益を不当に害する」こととなる可能性があります。
ただし、当該データベースに含まれているデータの一部だけを抽出して、他のデータと組み合わせて学習用データセットを作成したような場合に、著作権侵害になるかどうかは、ケースバイケースです。

Q12. 当社(AI提供者)がデータを収集して作成したAI学習用データセットは、著作権法上の著作物として保護されますか。

A. AI学習用データセットは、①情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの(データベース)に当たり、かつ②情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有する場合は、著作権法上の著作物(データベース著作物)として保護されます(著作権法2条1項10号の3、同法12条の2第1項)。
ただし、上記②の要件を満たすのは、かなり難しい(ハードルが高い)といえます。

Q13. 当社(AI提供者)は、既存の著作物を収集して、AI学習用データセット(既存の著作物がほとんどそのままの形で含まれています)を作成しました。当社が第三者に当該AI学習用データセットを譲渡することは、著作権侵害になりますか。

A. 当該AI学習用データセットの利用がAI学習(情報解析)という目的に限定されている限りは、原則として、著作権侵害になりません。
著作物は、情報解析の用に供する場合は、その必要と認められる限度において、「いずれの方法によるかを問わず」、利用することができます(著作権法30条の4)。
著作物の譲渡も、著作物を利用する「方法」の一つです。

Q14. 当社(AI提供者)は、既存の著作物を収集・利用してAI学習(追加学習)をして、AI学習済みモデルを作成しました。当社が第三者に当該AI学習済みモデルを譲渡することは、著作権侵害になりますか。

A. 原則として、著作権侵害になりません。
ただし、意図的に特殊なAI学習をした結果、AI学習済みモデルが既存の著作物の類似物を生成する蓋然性が高い状態になっている場合等には、著作権侵害になる可能性があります。

AI学習済みモデルに、AI学習に利用された既存の著作物の創作的表現が残存していることは、通常はありません。
したがって、AI学習済みモデルは、既存の著作物の複製物や二次的著作物とは認められず、AI学習済みモデルの譲渡は、原則として、著作権侵害になりません。
ただし、意図的に特殊なAI学習をした結果、AI学習済みモデルが、AI学習に利用された既存の著作物の類似物を生成する蓋然性が高い状態になっている場合等には、当該AI学習済みモデルに、既存の著作物の創作的表現が残存しているとして、当該AI学習済みモデルが法的には既存の著作物の複製物であると評価される可能性があります(このような解釈については見解が分かれています)。

Q15. AIで生成した創作物に、著作権は発生しますか。

A. ケースバイケースです。
AIで創作物を生成した者に①創作意図と②創作的寄与がある場合は、当該創作物に著作権が発生する可能性があります。

著作権は、人間が創作した創作物のみに発生します(AIが自律的に生成した創作物には発生しません)。
人間がAIで創作物を生成する過程において、その人間に①創作意図と②創作的寄与がある場合は、その人間がAIを道具として当該創作物(AI生成物)を生み出したと考えられるため、当該創作物に著作権が発生する可能性があります。
創作的寄与があると認められやすいのは、人間がAIで創作物を生成する過程において、創作的表現を具体的に示す詳細な指示・入力をし、かつ、生成物を確認しながら指示・入力を修正しつつ試行を繰り返した場合等です。

Q16. 当社(AI提供者)は、他社の特許発明(特許公報)、登録商標(商品・サービスのネーミング・マーク)、登録意匠(デザイン)を無断で利用することによって、AIシステムの学習(追加学習)をして、学習済みのAIシステムをサービスとして提供したいのですが、これは特許権侵害、商標権侵害、意匠権侵害になりますか。

A. 汎用型のAIシステムである限り、原則として、特許権侵害、商標権侵害、意匠権侵害になりません。
特許権侵害となるのは、特許権者に無断で特許発明を「実施」した場合です。
商標権侵害となるのは、商標権者に無断で登録商標を「使用」した場合です。
意匠権侵害となるのは、意匠権者に無断で登録意匠(画像意匠)を「実施」した場合です。
他社の特許発明、登録商標、登録意匠に関するデータを利用してAI学習をする行為や、当該データを利用して学習したAIシステムを提供する行為は、上記の「実施」や「使用」に当たりません。

ただし、特殊なAI学習をすることにより、AIシステムが特許権侵害、商標権侵害、意匠権侵害を誘発する可能性が高い状態になっている場合(例:登録商標と同一・類似の生成物のみが生成される状態になっている場合)は、そのAIシステムを提供する行為は、特許権、商標権、意匠権の間接侵害行為になる可能性があります。
上記のような場合に、AI利用者による特許権侵害、商標権侵害、意匠権侵害が行われたときは、AI提供者が幇助者として責任を負う可能性もあります。

Q17. 著作権、特許権、商標権、意匠権のうち、人間が創作したもののみに発生する権利はどれですか。

A. 著作権、特許権、意匠権です。
著作権、特許権、意匠権は、人間が創作したもののみに発生する権利です(AIが自律的に生成した生成物には発生しません)。
商標権は、AIが自律的に生成した生成物にも発生します(商標登録を受けることができます)。

Q18. 当社(AI提供者)は、特定の著名人の肖像を高精度に生成できるAIシステムを、「◯◯(当該著名人)の肖像を自由に作れる」と表示して、当該著名人(の事務所等)に無断で販売したいのですが、これはパブリシティ権侵害になりますか。

A. パブリシティ権侵害になる可能性が高いといえます。
著名人の肖像等を無断で使用する行為は、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、③肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合には、パブリシティ権侵害になります。
AIシステムが、特定の著名人の肖像を高精度に生成できるものであり、AIシステムの販売の際に、当該著名人の肖像を生成できることを表示している場合は、通常、購入者は、当該著名人の肖像を鑑賞できることに着目して当該AIシステムを購入するため、当該AIシステムの販売行為は、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするものといえます。

本件において、AIシステムの購入者が、当該AIシステムを利用して、当該著名人の肖像を生成したうえで商品に付して販売するといったパブリシティ権侵害行為をした場合は、貴社(AI提供者)は、幇助責任(共同不法行為責任)を負う可能性もあります。

Q19. 当社(AI提供者)は、AIモデルの学習(追加学習)をするために、多数の個人情報を収集して学習用データとして利用したいのですが、プライバシーポリシーの利用目的に、「取得した個人情報をAIモデルの学習用データとして利用すること」を記載する必要はありますか。

A. 原則として、記載する必要はありません。
多数の個人情報を学習用データとして利用して作成した学習済みパラメータ(AIモデル)は、当該パラメータと特定の個人との対応関係が排斥されている限りにおいては、個人情報には該当しません。
また、個人情報を、統計データ等の特定の個人を識別することができないデータに加工すること自体を、利用目的とする必要はありません。

Q20. 当社(AI提供者)は、当社が収集した多数の個人情報を学習用データとして学習(追加学習)したAIモデルを、顧客に提供したいのですが、これは個人情報保護法の規制に抵触しますか。

A. 原則として、個人情報保護法の規制に抵触しません。
多数の個人情報を学習用データとして学習(追加学習)した学習済みパラメータは、当該パラメータと特定の個人との対応関係が排斥されている限りにおいては、個人情報には該当しません。
したがって、学習済みパラメータと特定の個人との対応関係が排斥されているAIモデルを顧客に提供する行為は、原則として、個人情報保護法の規制に抵触しません。

Q21. 不正競争防止法上の「営業秘密」とは、どのような情報ですか。

A. ①秘密として管理されている(秘密管理性)、②生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって(有用性)、③公然と知られていないもの(非公知性)をいいます。
秘密管理性が認められるためには、企業の秘密管理意思(特定の情報を秘密として管理しようとする意思)が、具体的状況に応じた経済合理的な秘密管理措置(秘密である旨の表示、アクセス制限、秘密保持契約等)によって、従業員や取引相手先に明確に示され、結果として、従業員や取引相手先が当該秘密管理意思を容易に認識できる状態になっていることが必要です。

Q22. 不正競争防止法上の「限定提供データ」とは、どのような情報ですか。

A. ①業として特定の者に提供する情報であり(限定提供性)、②電磁的方法により相当量蓄積され(相当蓄積性)、③電磁的方法により管理されている(電磁的管理性)、④技術上又は営業上の情報であって、⑤営業秘密に当たらないものをいいます。
限定提供データとは、特定の者に限定して提供されるデータのことです。
電磁的管理性が認められるためには、データ保有者の「データを特定の者に対してのみ提供するものとして管理しようとする意思」が、データ提供時において、管理措置(アクセス制限等)によって、第三者が認識できる状態になっていることが必要です。
技術上又は営業上の情報には、学習用データセットや学習済みAIモデル等も含まれます。

Q23. 当社(AI提供者)は、AIサービスを開発するために、第三者が公開しているデータ、データセット、学習済みパラメータ、プログラム等を利用したいと考えていますが、まず何を確認する必要がありますか。

A. ①当該データ等に関する契約(ライセンス、利用規約を含みます)と②当該データ等に関する法律(著作権法等)を確認する必要があります。
当該データ等に、CC(クリエイティブ・コモンズ)ライセンス、ODC(オープン・データ・コモンズ)ライセンス、OSS(オープン・ソース・ソフトウェア)ライセンス等のライセンスが付されている場合は、そのライセンスの内容を正確に確認する必要があります。

Q24. 当社(AI提供者)は、他社が開発したAIモデルを組み込んだサービスを顧客に提供したいのですが、利用規約については、どのように考える必要がありますか。

A. 他社(AI開発者)のAIモデルに関する利用規約の内容を確認して、当該他社との取引(当該AIモデルの組込み)の可否等を判断する必要があります。
貴社のサービスを顧客に提供する場合は、他社(AI開発者)のAIモデルに関する利用規約の内容を踏まえて、貴社のサービスに関する利用規約を設計する必要があります。

Q25. 当社は、独自のAIアルゴリズムを発明したのですが、特許を取得すべきですか。

A. 特許取得のメリットとデメリットを比較衡量して判断すべきです。
特許取得の主なメリットとデメリットは、次のとおりです(これら以外にも考慮すべき事情はあります)。
【メリット】
・法律により、一定期間の独占的・排他的な利用が保護されます。
・他社が同一の発明をした場合も、先に特許を取得していれば、貴社が優先します。
(他社が先に特許を取得すると、貴社が当該発明を実施することは不可能又は困難になります)
【デメリット】
・特許を取得すると発明の内容が公開されるため、他社に模倣される可能性があります。
(貴社において「他社が当該発明を実施したこと」を証明できないと、当該他社に対する法律上の権利行使ができないことを考慮する必要があります)
・法律上の保護は、一定期間に限られます。

特許取得のメリットとデメリットを比較衡量した結果、あえて特許を取得せずに、機密情報として(例えば、不正競争防止法上の営業秘密として)保護するという判断もありえます。

Q26. AIモデルの学習済みパラメータについて、著作権や特許権は発生しますか。

A. 原則として、著作権も特許権も発生しません。
AIモデルの学習済みパラメータは、AI学習用プログラムにデータを入力することによって、自動的に調整・生成されるものであって、人が創作するものではないので、原則として、著作権や特許権は発生しません。

AIモデルの学習済みパラメータは、機密情報として(例えば、不正競争防止法上の営業秘密として)保護することになります。

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