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生成AIの利用(生成)段階における法律問題

目次

【問題】作家名・作風等を無断でプロンプト等に入力することは、著作権侵害となる?

【結論】

多くの事案では、著作権侵害とはならない。

※作家名・作風等を無断でプロンプト等に入力すること自体は、著作権侵害とはならないが、その結果として生成されたAI生成物が特定の作品に類似する場合は、当該AI生成物を使用することは、著作権侵害となる可能性がある。

【理由】

多くの事案では、作家名・作風自体は、著作物ではない。

【問題】AIで生成したAI生成物が特定の作品に類似する場合に、当該AI生成物を使用することは、著作権侵害となる?

【結論】

AI生成物が、他人の著作物に類似していて、かつ、他人の著作物に依拠して(他人の著作物を意識的に利用した場合等)生成された場合は、著作権侵害となる可能性がある。

※AI生成物を私的に使用する場合は、原則として著作権侵害とはならない。

【理由】

ある表現が、①他人の著作物に類似している、②他人の著作物に依拠している、③著作権法が定める態様(支分権に当たる態様)で利用する、という要件を充たす場合は、原則として著作権侵害となる。

【問題】AIで生成したAI生成物について、生成者に著作権は発生する?

【結論】

生成者が「AIを道具として利用して創作した」場合(生成者に創作意図と創作的寄与がある場合)は、著作権が発生する可能性がある。

※「創作的寄与」の有無は、プロンプト等の分量・内容、生成の試行回数、複数の生成物からの選択、生成後の加筆・修正等を考慮して判断される。

【理由】

著作者(著作権の主体)は、原則として人間に限られる(AIは人間ではない)。

【問題】個人情報を無断でプロンプト等に入力する場合に、当該個人情報の利用目的を考慮する必要はある?

【結論】

個人情報の利用目的を考慮する必要はある。

個人情報をプロンプト等に入力することが、当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲内の行為である必要がある。

【理由】

個人情報保護法17条(利用目的の特定)
1項 個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。
2項 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

個人情報保護法18条(利用目的による制限)
1項 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。

【問題】個人情報をプロンプト等に入力することが、個人情報の第三者提供に当たる可能性はある?

【結論】

個人情報の第三者提供に当たる可能性はある。

→個人情報をプロンプト等に入力することが、個人情報の第三者提供(外国にある第三者への提供)に当たるか、個人情報の取扱いの委託に当たるか、クラウドサービスの例外に当たるか等を検討する必要がある。

【理由】

多くの事案では、データをプロンプト等に入力することは、AI利用者からAI提供者に対する当該データの移転を伴う。

【問題】他社から開示された秘密情報をプロンプト等に入力することは、法的に問題となる?

【結論】

他社との間の契約(秘密情報開示契約、秘密保持契約等)に違反する可能性がある。

秘密情報が「営業秘密」や「限定提供データ」に当たる場合は、不正競争防止法に違反する可能性がある。

【理由】

多くの事案では、データをプロンプト等に入力することは、AI利用者からAI提供者に対する当該データの移転を伴う。

多くの事案では、他社から秘密情報の開示を受ける際に、当該他社との間で、秘密情報の目的外利用禁止義務、第三者提供禁止義務、秘密保持義務等を定めた契約を締結するので、他社から開示された秘密情報をプロンプト等に入力することは、これらの契約に違反する可能性がある。

秘密情報が「営業秘密」や「限定提供データ」に当たる場合は、不正の利益を得る目的でそれらを利用する行為等は、不正競争防止法に違反する可能性がある(同法2条1項7号、同14号)。

※「営業秘密」とは、「秘密として管理されている(=秘密管理性)生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報(=有用性)であって、公然と知られていないもの(=非公知性)」をいう(不正競争防止法2条6項)。

※「限定提供データ」とは、「業として特定の者に提供する情報(=限定提供性)として電磁的方法により相当量蓄積され(=電磁的方法による相当量蓄積)、及び管理されている(=電磁的方法による管理性)技術上又は営業上の情報(営業秘密を除く)」をいう(不正競争防止法2条7項)。

※不正競争防止法2条(定義)
1項 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
7号 営業秘密を保有する事業者(以下「営業秘密保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為
14号 限定提供データを保有する事業者(以下「限定提供データ保有者」という。)からその限定提供データを示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその限定提供データ保有者に損害を加える目的で、その限定提供データを使用する行為(その限定提供データの管理に係る任務に違反して行うものに限る。)又は開示する行為

【問題】「営業秘密」や「限定提供データ」(不正競争防止法)をプロンプト等に入力すると、それらの情報は「営業秘密」や「限定提供データ」ではなくなる?

【結論】

「営業秘密」や「限定提供データ」ではなくなる可能性がある。

【理由】

多くの事案では、データをプロンプト等に入力することは、AI利用者からAI提供者に対する当該データの移転を伴う。

「営業秘密」とは、「秘密として管理されている(=秘密管理性)生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報(=有用性)であって、公然と知られていないもの(=非公知性)」をいう(不正競争防止法2条6項)。

AI利用者がAI提供者に「営業秘密」を何の制約もなく移転すると、秘密管理性や非公知性が失われて、「営業秘密」ではなくなる可能性がある。

「限定提供データ」とは、「業として特定の者に提供する情報(=限定提供性)として電磁的方法により相当量蓄積され(=電磁的方法による相当量蓄積)、及び管理されている(=電磁的方法による管理性)技術上又は営業上の情報(営業秘密を除く)」をいう(不正競争防止法2条7項)。

AI利用者がAI提供者に「限定提供データ」を何の制約もなく移転すると、限定提供性や電磁的方法による管理性が失われて、「限定提供データ」ではなくなる可能性がある。

【問題】自社(会社)で生成AIを利用する場合、役員・従業員向けの社内ガイドラインを作成する必要はある?社内ガイドラインは、どうやって作成する?

【結論】

社内ガイドラインを作成する必要はある。

社内ガイドラインは、社内ガイドラインのひな形を参考にして、自社の業務内容、生成AIの利用目的、取り扱うデータの種類等を踏まえて作成するとよい。

社内ガイドラインのひな形(JDLA)
https://www.jdla.org/news/20230501001

【理由】

生成AIの利用を促進し、法的・倫理的リスクを軽減するためには、社内ガイドライン(生成AIに関する社内の統一的ルール)を作成する必要がある。

【問題】他社が提供する生成AIを利用する場合、利用規約のどこをチェックすればよい?

【結論】

主に、利用規約の次の点をチェックする必要がある。
・商用利用の可否・条件
・プロンプト等に入力したデータやAI生成物等に関する知的財産権の帰属・利用条件
・プロンプト等に入力したデータをAI提供者が学習等に利用するか否か
・プロンプト等に入力したデータにつきAI提供者が秘密保持義務を負うか否か
・個人情報に関する定め(AI提供者のプライバシーポリシー)
・免責条項
・AI利用者の責任(損害賠償責任等)
・禁止事項
・準拠法・紛争解決手続

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